前回のブログ(※)で、360度評価を ”育成目的” 以外で使うことは危険であり、百害あって一利なしだと述べた。あくまでもマネジャーの育成のために活用するものである。
では、どのように活用するか。ポイントは以下の5点。1から順に述べていく。
1.設問
2.事前案内
3.協力者選び
4.結果のフィードバック
5.フォローアップ
1.設問は、大切なメッセージにもなる
360度評価でどのような設問を用意するか。専門業者の保有する ”吊るし” のものを使うか、自社に合ったものを作ってう使うか。それぞれにメリットがある。
*専門業者の持っている設問を使うメリット
・世間一般のマネジャーに必要な要素が網羅的に押さえられている
*自社で作る設問を使うメリット
・自社のマネジャーにとって大切/必要と考えられる要素のみに限定できる
マネジメント職と言っても違いがある。
専門業者の保有する360度評価を活用する場合、1つ注意したいことがある。それは、設問が ”どの階層のマネジャー” を対象にしたものかということ。
”マネジメント” といっても、社長や役員、事業部長などのハイクラスなマネジメント層もあれば、部長や課長というミドルマネジメント層、係長やチームリーダーといった監督職と呼ばれるマネジメント層もある。
どのマネジメント層かによって当然ながら、期待役割や求められる行動は異なる。
「いやいや、同じ設問で全マネジメント層を調べることで、層別の傾向や違いが見えてくる。それは有用な情報なのでは?」という主張もあるかもしれない。
が、繰り返すが、360度評価は育成目的で使うものである。本人が結果を受けて何に気づき、今後に何を活かしていくか・・・これが目的である。ここを外してはいけない。
他社との比較が気になる・・・
専門業者の保有する360度評価ツールを選ぶ基準の1つにあげたくなるのは、「うちのマネジャーのレベルは他社のマネジャーと比べてどうなのか?」という点である。
その点だが、人が人を評価するときにはどうしても ”甘辛” が生じる。個人レベルだけでなく、組織レベルでも同じである。甘い評価をしがちな組織もあれば、辛い評価をする組織もある。
そう考えると、他社との比較はもちろん、同じ会社のマネジャーどうしであっても、結果(スコア)の比較にさほど意味がない。
自社オリジナル版をつくるには苦労もあるが・・・
設問を自社で作るには手間はかかるが、自社で現在活躍しているマネジャーをヒントにしたり、会社のビジョンや戦略をもとに、今後求めるマネジャー像をヒントにしたりするなどして作ることでとても意義深いものができる。
そうして作り上げた設問は、「うちの会社に必要なマネジャーはこんな人だ」というメッセージにもなる。
参考書籍:中原淳 著『サーベイ・フィードバック入門』 PHP研究所 2020年
2.事前案内は丁寧に、回答者の立場で考える
初めて360度評価を実施するときは特に注意である。従業員の心の中は疑問であふれている。
(対象となるマネジャーの心の中)
・何の目的でやるのか
・私はこれで評価されるのか(出世に影響するのか)
・あとでダメ出しされるのか
・悪い評価だったらどうなるのか(研修などで吊るしあげられるのか)
(回答協力する部下の心の中)
・誰がどう回答したのかバレないだろうか
・正直に回答して、マネジャーに恨まれないか(嫌がらせされないか)(評価を下げられないか)
・結果はどう扱われるのか
※中には、待ってましたとばかりに「無茶苦茶書いてやろう!」と息巻く部下もいる
こういった点を踏まえた事前案内をしなくてはならない。私の担当した会社では、YouTubeを使い、従業員の皆さんへ丁寧な説明を行っていた。
これまでも360度評価をやっていたが、上手に活用できておらず、内容を見直して実施するときは、実施目的や結果の扱い方などを従業員に改めて丁寧に示す良い機会だ。
3.協力者選びのカギは、マネジャーの納得感
回答協力者の選定に関する質問を受けることが多い。誰がマネジャーに対する評価をするのか。
観点は2つ。
1.誰に協力してもらうか
2.誰が選ぶか
1番目の「誰に協力してもらうか」。360度といっているので、基本は全方位、対象となるマネジャーの「上司」「同僚」「部下」に協力してもらう。
だが、私は部下だけの協力で十分だと思っている。なぜなら、上司や同僚は回答するだけの情報をもっていないことが殆どだと思うからだ。
例えば、皆さんの会社の部長は、その部下である課長が課のメンバーに対してどのようなマネジメントをしているか、観察する機会はほぼないだろう。今のようなリモートワークの環境では尚更だ。
課長の同僚も同じである。隣の課の課長が、どのような部下マネジメントをやっているかなんてわからない。
だから、360度評価の協力者に対象マネジャーの上司や同僚を加えることに意味を感じない。
2番目の「誰が回答協力者を選ぶか」。対象となるマネジャー自身に選んでもらうか、人事部など主管部署が指定するかという話である。
結論、どちらでも構わない。結果をもらうマネジャーにとって、どちらのほうが結果に納得感を得られるのか、ここが肝心な点である。
人事部が主導して回答協力者を選んだが、結果を受けたマネジャーが「協力者の選定に恣意性を感じる」などと受け取れば、360度評価自体の価値がなくなる。
回答協力者に人数制限を持たせず、仕事上でマネジャーに関係する全員を協力依頼する場合は、この点に神経質になる必要はないが、そうでない場合は ”マネジャーの納得感” を起点に思考してほしい。
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次回は、「4.結果のフィードバック」について書いていく。(次回ブログへ)
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