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研修を嫌う課長たち

coffee マネジャー研修の所感
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ある大手企業の人材育成担当者(HRBP的な役割)の皆さんとの会話でこんな発言があった。

課長への研修って、どうやれば実施できるんですか?

どうやら、課長への研修をやりたいのだが、関係者からとにかく反発されるらしい。関係者とは、課長本人らもそうだが、その上長(部長ら)からも反対されるようである。

特定の部署だけの話ではなく、多くの部署で同じような状況のようである。

私の経験では、この事象はこの会社だけのことではなく、どこの会社でも起こっていると推測する。

どうしてこのようなことが起こるのだろうか。いくつかの仮説がパッと思いつく。

考え事をしている男性会社員のイラスト | かわいいフリー素材集 いらすとや

仮説1 学ぶ意欲がない
仮説2 研修なんて意味がないと思っている
仮説3 忙しくて余裕がない
仮説4 人材育成部門からの案内の仕方に問題がある

1つずつ考えてみる。

仮説1 学ぶ意欲がない

課長に限らず、日本人ビジネスパーソンは海外に比べて、格段に学ばないと言われる。(自己研鑽しない日本

東南アジアにあるグループ会社の人から「こちらの国の人(マネジャーに限らず)はガツガツ学ぶ。そしてスキルアップして外へ出て行ってしまう」と聞いたことがある。

日本では、管理職の転職はまだまだ少ない。スキルアップして外へ出ようとか、更に上のマネジメントを目指そうなどとは思っていないだろう。

マネジメント職はプロの仕事(専門職)であるという自覚が薄いため、よその会社でマネジメント職をやってみたい、マネジャーとして活躍したいという発想が湧いてこない。

そうなると、自分のマネジメントスキルが現在どれほどかという認識も持たないし、スキルを高めようという意欲も生まれづらい。

となると、「研修などのような学ぶ機会は不要」と言う状況になっても仕方がない。

仮説2 研修なんて意味がないと思っている

大手企業であれば、管理職になるまでに、新入社員研修を皮切りに多くの研修を受講してきている。

過去の振り返ってみると、研修内容はほとんど覚えていない。内容どころか「そんな研修を受けたっけ?」という発言が出てくる。

悲しいが、ほとんどの研修はそんなものではないだろうか。

そういった経験を積んでいれば、”研修なんて意味がない” と思ってしまうのは自然なことだ。

ただし、新任マネジャー研修のように、大きく役割が変わり、知らねばならない知識(労務管理、評価制度など)などがある場合は必要性に駆られていることもあり、意欲高く受講する。

仮説3 忙しくて余裕がない

いま、課長は本当に多忙だ。どこの会社でも課長は可哀そうなくらいに大変だ。

すべての業務が課長に集中する。

労務管理をしっかりしろ、コンプライアンスを徹底させろ、部下と1on1をやれ、部下のキャリア支援をしろ、ハラスメントに注意しろ、パルスサーベイの結果に注意しろ、・・・、で成果を出せ。

無理ゲーだ。

そんな中で、研修で1~2日間拘束されるのはまっぴらごめんと思うのは自然だ。

ただし、研修内容をきちんと習得すれば、その忙しさが軽減することもあるのも事実。学ばないから多忙なまま、という点を見逃してはならない。

仮説4 人材育成部門からの案内の仕方に問題がある

課長宛てにメールが届く。「○月××日に「キャリア支援研修」をやります。ご参集ください」と。

Eメールのイラスト | かわいいフリー素材集 いらすとや

メール文をさらに読むと、「今後、会社として社員のキャリア自律を支援する。そのために必要な知識とスキルを管理職に提供するために研修をやる」と書いてある。

この文章で、研修対象者である課長を研修へ動機づけられるであろうか。

そもそも、なぜこのタイミングで ”社員のキャリア自律の支援” なのか、さっぱり分からない。しかも、冷静に考えると、一般の人は ”キャリア” と聞いても「出世」とか「異動希望」とかいったことを想像し、本来の意味など知らない。

更に言えば、「うちの会社でキャリアなんて考える意味があるのか」「会社都合の異動があるじゃないか」といぶかしく思っていることもあるだろう。

このような状況では、研修を「面倒くさい」とか「無駄」とか思うのは自然。

キャリア自律支援以外のテーマを扱う研修でも、似たような状況は起こっている。

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管理職を対象にした研修を実施したいのであれば、上記の点を踏まえた準備や根回し、事前案内、研修内容の検討、講師の選定、フォローアップなどを、他の対象者(新入社員、若手・中堅社員など)とは比較にならないほど周到に行う必要があるのかもしれない。

ひとつ伝えたいのは、研修開始直後は反抗的な態度をとっていた課長も、「この研修は役立つ」と思えば、態度は急変し、一気に参加意欲が高まる

私は、そんな光景を多く(数百人?)見てきている。

仮説1に書いたような、課長は「学ぶ意欲がない」のではなく、自分の学び・成長につながるような学びの機会があることを知らない(経験したことがない)だけなのかもしれない。

育成担当者の皆さん、少々の反発で萎えないように頑張って!